娚の一生

 若い頃は運命やら情熱といったことから恋愛が始まり、最終ゴールとして結婚を描く。
 それは最上級の幸せの証であり、幸せの達成を保証してナンボのものである。

 この漫画での結婚像は違う。
 まず、淡々とした日常があり、その延長上に結婚があるのだ。
 結婚も大人同士が互いに尊重しあい、たまに助けあうという形を理想としているように見える。
 幸せを誓い合い、手を携え合って一緒に歩もうという感覚は希薄。
 勿論、恋愛感情はあるのだが、それも情熱的とは言い難く大人の冷静なるものだ。(表面的には)


 長年夢に描いていた理想が目の前に現れても、愚直な想いと平凡な日常がそれを凌駕する。
 関係性においても、時には熱さを見せるも日常においては淡白で平凡だ。
 
 
 人は平凡でのどかな日常に、どこかで憧れている面があるのかもしれない。
 ジブリ映画や素朴な田舎生活を取り上げる番組や本が支持されるのは、そういうことだろう。
 
 一方でそれらが含む問題点に目をつむり賞賛している人々もいるだろう。
 どのような道を選んでも苦労はある。
 その時に冷静に対処できるような状況を自分の周りに築くことが大事なのだろう。
 心の余裕は幸福感から生まれると思うからだ。

 多少の不幸が訪れても乗り越えていけるような関係性を。
 そして自分が最も大切に考える価値が何であるかを探せたら…

 人は幸福を感じることができるのだと思う。

娚の一生 1 (フラワーコミックスアルファ)

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